レポート:第1回朝日サミット

岡山県産米「朝日」は、1908~09年頃に京都で発見された後(当時の品種名は「日ノ出」」)、1925年に岡山県の奨励品種として採用されました。コシヒカリやササニシキの祖先にあたり、品種改良されていない希少な在来品種。かつては「西の朝日」「東の亀の尾」と言われ、美味しいお米の代名詞となりました。大粒で、ふくよかなあっさりとした味。余分な粘りがなく、ぱらりとほぐれる食感。冷めても美味しく、寿司米としても名高い一方、酒造適性にも優れており、数年前よりはせがわ酒店では「朝日」に注目、全国各地の蔵元の協力を得て、「朝日」を使用したお酒の商品化に努めてきました。年々取り扱う商品も増えてきた事もあり、情報を共有するとともに、酒米としての「朝日」の可能性を探るため、2018年3月20日に有楽町の東京交通会館で「朝日」を扱う全国の蔵元や酒造関係者が多数参加して「第1回朝日サミット」が開催されました。

当日は、精米業者の立場から新中野工業の為久氏による「朝日」の酒造適性の紹介があり、浸漬時の胴割れ率を抑えるための刈り取り後の乾燥方法や温度についてお話を聞く事が出来ました。蔵元からは新澤醸造店の新澤社長と清水清三郎商店の内山杜氏によるそれぞれの蔵での仕込み方の説明があり、最後に松本酒造の顧問を務める勝木氏からは、長年酒米の栽培に携わってきた経験から「朝日」との出会いやその特長についてのお話がありました。

(参加された蔵元様達も熱心に聞き入ります)

飯米として優秀な「朝日」は酒米としてのポテンシャルも秘めたお米ですが、お話を聞いていると、酒造りに最適な米質を得るためには、栽培方法はもちろんの事、収穫後の処理や管理方法にもまだ改善できる点がたくさん有るとの事です。現状では生産者が思い思いに育てている状況。農家、農協、精米会社、蔵の垣根を超えて「朝日でいいお酒をつくるにはどうすれば良いか?」という課題について、活発な情報交換やディスカッションを行い、米質を向上していくことが、さらなる酒質向上の鍵になりそうだと感じられました。今回の「朝日サミット」がそのきっかけとなればと期待しています。

(勉強会の後は「朝日」で醸した35点の出品酒をきき酒)

(午後からは飲食店様、酒販店様も参加し、会場の熱気が一気に上がっていきました!)

「朝日」の酒の印象を参加者に聞いたこところ、「きれいな酒質」「すっきりとした甘み」という意見が多く聞かれました。実際に造っている蔵元さんにも「朝日」の印象を教えていただきました。

みむろ杉を醸す今西さんは朝日で醸す「今西」ブランドを立ち上げました。「僕らの目指す、爽やかな透明感があってキレのいい酒質に朝日は上手くハマってくれます。仕込んでいて全然違和感がありません。」このお米のクセがなく素直なキャラクターは酒造りを行う上で扱いやすく好印象の様です。それだけに仕上がるお酒の味わいも高評価を得ています。リリース初年度はあっという間に完売。2期目は増産して、より多くの方に届くように対応しています。

純米大吟醸と純米の2種類を朝日で醸す寒紅梅の増田専務は「香り高く仕上げる純米大吟醸、味わい重視の純米酒、どちらも酸が出るのが特徴です。そして寝かせるよりはフレッシュな内に楽しむのをオススメします。」との事。勝木先生に師事し、初めて朝日を仕込む時も学んだノウハウを活かす事が出来たそうで、朝日の仕込みに対しての自信がうかがえました。

一方でわしが國を醸す伊藤専務は朝日が新たな日本酒ファンを生み出す事にも期待しています。「初めて飲むお酒はなるべく綺麗で上質なものであって欲しいので純米大吟醸で醸しました。純米大吟醸でもお手頃価格を実現出来る朝日はエントリー酒として最適。純米大吟醸のエントリー酒という新たな入り口は、より多くの人に日本酒の美味しさを気付かせてくれると思います。この価格を地元米でやろうとするとタンパク質のより多い飯米となってしまい、酒造好適米だと価格が折り合いません。」とのこと。ちなみに”わしが國”というのは元々地元で展開していたブランド。肩肘を張るのでなく日常での飲用シーンに溶け込んだ存在です。毎日の晩酌などカジュアルに楽しむ純米大吟醸としてもオススメです。

 

今回開催した「朝日サミット」での試飲や参加者間での活発な意見交換を通して得た知識やアイディアが、「朝日」を今後どのような味わいへと進化させていゆくのか、さらなる発展に期待大です! ぜひ皆さんも各蔵元が個性を表現した「朝日」の日本酒をためしてみてください。