「渡舟・太平海」府中誉 を訪ねて -酒蔵編-

皆様こんにちは、はせがわ酒店営業部の菅野です。以前、「渡舟」「太平海」を醸す府中誉株式会社 山内社長にセミナーをして頂いた後、短稈渡船の復活栽培に至るまでのロマン溢れるお話や、最新設備での酒造りにとても興味が湧きました。実際に見てみたい!と言う気持ちを抑えられず、蔵にお伺いしてきましたので皆様にもご紹介させていただきます。

蔵に到着すると、歴史を感じさせる建物に思わず目が奪われます。それもそのはずで、幕末から明治初期頃に建てられた長屋門を初めとし、蔵の母屋や文庫蔵など明治から大切に使われてきた7つの建物が国の登録有形文化財に指定されています。この様に古くから続くものを大切にする蔵の姿勢を感じながら仕込蔵に入ると、きちんと清掃が行き届いた蔵の中には、日本酒の蔵ではあまり見たことの無いピカピカの機械がずらり!古き良きものを大切にしながら酒造りのために設備投資もしっかり行っている様子が一目でわかり、これらの機械がどの様に使われるのかと興味どんどん膨らみます。

造り半分、詰め半分

府中誉の酒造りへの姿勢を端的に表す言葉が「造り半分、詰め半分」。一般的に醸造過程が重視されがちな日本酒ですが、山内社長がワイン造りを見学した時、むしろ搾った後の管理をとても大切にしていることに気づきました。そこで府中誉でも醸造過程(造り)と同じくらい、絞ってから瓶詰まで(詰め)のお酒の取扱いに気を配っているそうです。実際に蔵内を見せていただくと、日本酒蔵としてはめずらしいワイン用の設備まで導入し、お酒に余計な力を与えたり酸化をさせたりしないような工夫を徹底していました。

絞ったお酒にストレスを与えずにタンクに移すことができるよう、従来の物よりも揺れを抑えて送ることのできるワイン用チューブポンプ。

絞ったお酒の澱下げをする「上げ桶」も高気密タンクを使用。窒素充填したタンクに入れることでお酒が酸素にほぼ触れずに管理できます。お酒を上からドボドボタンクに入れるのではなく、下から徐々にカサを増やしていけるのもこのタンクの良いところ。本当にノンストレス!

瓶詰ラインも主にワイナリーで利用されているイタリア製のものを使用。瓶詰め後も空気が入っている部分に窒素を入れることで瓶詰後の酸化を防ぎます。

日本酒業界では、酒造りに使う機械は限られたメーカーの製品を使うことが多い中で、業界の当たり前に囚われずに工夫を続ける柔軟さを感じました。また、見学をさせて頂く中で、こういった搾った後の管理だけでなく、醸造時においても細部まで手を抜かない蔵元の真摯な姿勢を随所に見つける事ができました。その一つ、洗米・浸漬コントロールの厳密さをご紹介します。日々変わる水温に対応できるよう事前に汲んだ水を専用チラーで冷やし温度を一定にしておきます。また米の水分量は毎日違うため都度計測し、それに合わせて洗米・浸漬時間をコントロールします。過去のデータが厳密に記録されており、蓄積されたデータを元に日々最善の秒数を導き出します。驚くことに麹米だけでなく、掛米も全く同じ工程で徹底的にコントロールしているとのこと!この気が遠くなる様な工程があってこそ、あのジューシーかつフレッシュな「渡舟」「太平海」の味わいが実現しているのですね。

酒米の水分量を図る計測器

酒蔵編はいかがだったでしょうか。次は府中誉と深いつながりを持つ短稈渡船の田んぼに向かいます!