平川ワイナリーを訪ねて

はせがわ酒店 営業の安藤です。今回は北海道「平川ワイナリー」にお伺いしてきました。ワイナリー設立者の平川敦雄さんはデュジャック、ポールジャブレエネ、シャトーマルゴー、ルフレーヴ、シュヴァルブランなど名立たるワイナリーでの経験を持ち、ル・ジャルダン・デ・センス、ランスブール、ミシェル・ブラストーヤジャポンでソムリエとしても研磨を積んでおり、世界品質のワインを手掛ける造り手です。19歳の時にソムリエになることを決心し、今に至ったストーリー(ソムリエ協会誌Sommelierで過去掲載~ソムリエと醸造家のあいだで~)、ロジカルな思想と熱いパッションに、会う人誰もがファンになります。そして私もその一人。平川さんのワインを飲んで感動し、このワインを販売したいと思い、どんな場所で造られているのか知りたくて北海道へ向かいました。

余市駅からタクシーで10分ほどの場所。平川ワイナリーのある沢町は海まで車で5分の場所にあり余市の葡萄栽培の海側の北限に位置しており、北海道の中でもこれより北に行くと海からの風の塩害と霧の影響でブドウを作るのが難しいそうです。平川ワイナリーのある沢町は余市で唯一マイナス10度以下にならない恵まれた場所にあり、風土が良く、風もあり、土壌も良く、日照量も多くバリエーションに富んでいます。

ワイナリーに到着して感じたのは空が開けていることと、畑が斜面になっていることです。太陽を妨げる山が無い為、日の出から日の入りまでずっと日の光を浴びることのできる素晴らしい環境です。ここはツヴァイゲルトレーベの商品名にもなっている藤城議さんがかつて果樹園を開いていた場所で、当時からさくらんぼや桃が美味しいと定評のあった場所です。また畑を起こしている時、昔の時代の矢じりや身分の高い人のお墓が見つかったそうで、はるか昔からそういった選ばれた場所だったのかも知れません。

 

北海道ならではの気候条件

余市は北海道の中でも日照量が多く、土壌はシンプルで全て粘土か火山性土壌。赤黒で地熱が高く、秋は気温と地温が逆転することもあるほど。北海道は秋が非常に短く、リースリングなど晩熟の品種は雪の影響のため栽培は厳しいですが、ケルナーは10月後半には熟すので余市に向いているそうです。フランスでは3月ぐらいまでに剪定をゆっくり行えばよいのですが、北海道では冬の間仕事ができないため、冬までの短い時間で急いで剪定をする必要があります。早いと10月後半には雪が降り始めますが、その際、積もった雪の中に葡萄樹を寝かして埋めることでマイナス気温の世界から樹が凍るのを防ぎます。雪は春に溶けるまで樹を守る役割を果たします。葡萄を栽培するのに雪が無いと樹を保つことができないというのも厳寒の北海道ならではの特徴といえます。

葡萄の栽培

平川ワイナリーでは草生栽培を取り入れており、草生栽培の方が良い葡萄がとれると研究では既に実証されています。冬の雪に埋もれた雑草がそのまま腐り春には土の栄養となり、また雑草の無くなった畑では地熱を活かせます。夏は雑草を通して余分な水分を蒸発させることもできます。また平川ワイナリーでは樹勢が強い場合は強剪定を行っています。北海道の土壌は基本的に粘土か火山性土壌ですが、シャルドネ、ピノグリはアルカリ性の土壌が向くので、中性の土壌にしていく必要があります。平川ワイナリーでは雑草の処理を考慮して他のワイナリーより少し高い、土から75cmの位置に葡萄の実をつけさせています。葡萄樹の間は1.25メートル。だいたい5メートルに3本の杭を立てて栽培しています。また、低農薬で葡萄を栽培していますが、農薬は畑に撒くと空に3割、土に3割逃げる為、その無駄をなくし農薬を循環させる最新設備を使用しているそうです。

平川ワイナリーのアイテムは限られたレストランを中心に流通しており、口に含むと料理が欲しくなるワイン、をテーマに料理との相性を細かく考えてあります。白ワインは魚貝類との相性が素晴らしく、また柑橘とも相性が良いです。赤は牛肉、豚肉、鶏肉、ジビエと幅広く、スパイス類がとてもよく合います。私が平川さんの造るワインを始めて飲んだのは、2016年2月24日、渋谷にある日本ワインのセレクトの良いビストロでした。その当時はまだ北海道ワインの施設で醸造をしており、飲んだワインはレ ジュール モンドゥー2013年。そのワインに衝撃を受け、翌日すぐに弊社ワイン担当に報告、取引が出来ることになりました。その後、某航空会社の国際線ファーストクラスに搭載されたり、世界料理学会In HAKODATEでは「日本のワインと北海道のワイン」のテーマでトークセッションをされ、瞬く間に日本を代表する生産者になりました。

そんな平川さんの活躍もあり、北海道は日本ワインの産地として大きく前進しています。ブルゴーニュの老舗ワイナリー、ドメーヌ ド モンティーユが函館に葡萄畑を購入し大きな話題になりました。ピノノワールとシャルドネの品質の高さに注目してとのことですが、世界が北海道の可能性に注目をしていることがわかります。2000年以前は10ヶ所以下だったワイナリーの数も、現在では30ヶ所以上に増えおりワイン特区に認定された余市町を中心に良質なワインを醸造するワイナリが続々と誕生、ますます注目が高まっています。