輝く黄金色に、いつまでも立ち上る一筋の泡。シャンパーニュはお祝い事や、プレゼント、パーティーなどの特別なシーンを華やかに彩ります。しかし一口にシャンパンと言っても造り手が個々に持つ想いやスタイルによってその味わいは大きく異なります。本記事でご紹介するゴッセはシャンパーニュで400年以上に渡りワイン造りの歴史を持つ老舗メゾンです。この度、醸造責任者を務めるオディロン氏がはせがわ酒店へ来社し、シャンパーニュの基本的な知識をはじめ、ゴッセの目指すブランドワインについてセミナーを行ってくださいました。
■シャンパンについておさらい
シャンパーニュの故郷であるシャンパーニュ地方はフランスでもずっと北にあり、冷涼な気候が特徴です。このエリアで収穫された主にシャルドネ、ピノノワール、ピノムニエを用いて造られますが、他の地域の葡萄や決められた以外の品種を使ってしまうとシャンパーニュとは名乗れません。葡萄を栽培する畑には最上のグランクリュ(特級畑)、プルミエクリュ(1級畑)、格付け無し、といったランクがあります。
醸造では収穫した葡萄からブレンド用に泡の無いスティルワインをはじめに造ります。葡萄の品質は年によって毎回変わってしまうので、いつもと同じ美味しさを引き出し、さらに複雑さと深みを持たせる為、収穫年や品種や畑の異なる複数のワインをアッサンブラージュ(ブレンド)します。それから瓶詰し、シャンパーニュ造りの代名詞とも言える瓶内二次発酵を行い、熟成を経て完成します。
年間生産量は3億本ほど。そのうち半分の1.5億本はフランス国内で消費されています。もう半分は輸出されていて、なんと日本はイギリス、アメリカに次いで世界第三位の輸入量だそう。ちなみにゴッセは中規模のメゾンですが年間100万本ほどの生産量で、全体から比べると決して多いとは言えない流通量ということです。
■ゴッセってどんな造り手?
ゴッセはシャンパーニュでも最良の葡萄が収穫されるアイ村にあります。この地で初めてワインを造ったのは1584年で、それは現在のスパークリングタイプのシャンパンが誕生する200年も前のことです。以来、400年以上ずっと家族経営を続け、大きくはせず、販売先は星付きのレストランやホテル、こだわりのワインバーや酒販店に限り、自らのブランドや味わいを大切にしたシャンパーニュ造りを行っています。現在70村200軒の栽培家から葡萄を購入していますが、全て周囲30km以内の村のみで、ほとんどが3世代以上のおつきあいのある良好な関係です。
■ゴッセのシャンパーニュ造り
そんなゴッセのシャンパーニュを特徴付けているのがマロラティック発酵をしないということ。マロラティック発酵は乳酸菌の活動を促し、ワイン中に含まれるリンゴ酸を乳酸に変化させる技法です。酸味を和らげ、香りに複雑さを生み出す効果があります。冷涼なシャンパーニュでは葡萄の酸味が強くなる為、ほとんどの造り手がマロラティック発酵を行いますが、ゴッセではこれをあえてしていません。
なぜかというと、発酵温度を上げる、乳酸菌を添加する、滓引きや濾過処理といった工程が不要になるため、葡萄が持つ本来の個性を失わずに済むと考えているからです。これによって他の造り手のおよそ2倍の酸度となりますが、この豊富な酸のおかげで長期熟成が可能となります。
さらにこの長期熟成もゴッセらしさを決定づける要素の一つとなっています。一般的にシャンパーニュはノンヴィンテージのものでは15ヶ月ほどの熟成期間で出荷されますが、ゴッセでは最低でもヴィンテージものと同等の3年以上の熟成期間を設けています。これによってリンゴ酸とそのほかの要素のバランスが取れ、独自の旨味をもたらします。
■試飲してみました!
今回試飲させていただいたのは「エクストラ ブリュット」「グランド レゼルヴ ブリュット」「グラン ロゼ ブリュット」「ブラン ド ブラン」「グランミレジム ブリュット 2012」「グランミレジム ブリュット 2006」「セレブリス エクストラ ブリュットロゼ 2007」「セレブリス エクストラ ブリュット 2007」「セレブリス セレブリッシモ 1995」という錚々たるラインナップ。実際に味わってみて、マロラクティック発酵をしないことによる、ビシッと背骨の通った酸が特長的でした。一部マロラクティック発酵をしているアイテムもありますが、基本的にはどれを飲んでも一貫したこのゴッセの特徴が感じられました。
試飲したアイテムのなかから、現在オンライン店で販売中のものをご紹介いたします!
・グランド レゼルヴ ブリュット
こちらはフランス内で一番売れているゴッセの看板アイテムです。全体の生産量の約60%を占めます。このワインについてオディロンさんは「実は造るのが最も難しいワインです。マロラティック発酵をしていませんが、再現性も重視しているからです。ノンヴィンテージでありながら、長期の熟成をしており、骨格はしっかり、味わいには深味があります。買ってから10年~15年とさらに寝かせていただいても全く問題ありません。」とのこと。香りには確かに熟成感があり、ほのかにナッツの様なニュアンス。一方でマロラティック発酵をしていないのでリンゴ酸の活きた味わいが印象的で、まだまだ若さがあります。フレッシュでカチリとした酸があり、太くしっかりとしたミネラル感が長く続きます。食前から食中まで幅広く活躍できそうだと感じました。
・セレブリス エクストラ ブリュット 2007
自然がゴッセにくれるもの、というテーマで作るセレブリスシリーズは、もともとオーナーの家族用に造られていました。過去30年間で7回しか造られていません。「セレブリスの生産量は年間1万本のみです。ドンペリが800万本作っているのでそれと比べると大海の中を泳ぐ1匹の小魚のようなものです」とのこと。リンゴや蜂蜜、ビスケットのような香りの中に柑橘系のニュアンスも感じられます。ちなみにこの年の葡萄は十分な凝縮感と糖度そして酸度を持っていたそうで、ゴッセが大切にしているという塩味とミネラル感がよく伝わってきます。余韻が長いのも特徴となっています。魚介との相性もよいとのことで日本料理にも是非合わせてみたい1本です。
・セレブリス エクストラ ブリュットロゼ 2007
セレブリスの中でも、このロゼに限っては日本にはたった1500本しか入ってきていません。香りはイチゴやブルーベリーなどベリー系、熟成由来の香ばしさも感じられます。味わってみると柔らかい旨味が広がり、グレープフルーツなど柑橘系のさわやかな酸味も感じられます。こちらも食前から魚、肉を問わずメインまで合わせることができます。ちなみにスタッフが以前別の機会にこのセレブリスロゼとイチゴのダックワースを合わせたらエレガントな酸味が調和してばっちりだったとのこと。デザートまでカバーできる万能シャンパーニュです。
・セレブリス セレブリッシム 1995 / ゴッセ
ゴッセの最長期熟成シャンパーニュがこのセレブリッシム1995です。滓とともに10年間寝かせ、その後滓を取り除きコルク栓をしてさらに14年間熟成させたことによってワインに唯一無二の複雑さを生んでます。世界で1000本しかリリースしておらず、日本にはその内百数十本しか入ってきていない大変貴重な1本です。それだけにオディロンさんもまさか今回試飲できるとは思ってなかったらしく、「開けてくれてありがとう!」と言って皆の笑いを誘っていました。
この1995年は葡萄がしっかり完熟しつつ、高い酸度を両立した非常に珍しい年だったそうで、それが滓との長い接触で旨味を引き出し、その後の酸化熟成で複雑さを引き出す方針を決めたきっかけになったそうです。他のラインナップとは明らかに違う濃い色合い、しっかりと熟したアンズやパイナップルなどの凝縮感のある香り。口に含むと非常に複雑で味わい豊かな印象を抱かせます。また、これだけの長期熟成にもかかわらず、まだフレッシュな酸味が余韻に感じらたことが驚きでした。
■ セミナーを終えて
オディロンさんは今回の来日されている間、様々な日本料理に触れる機会があったそうで、フランス料理にも通じる食文化の豊かさに感動したそうです。中でも「日本料理には塩味や苦味を活かした味わいの表現があることが、ゴッセの目指す後口のきめ細やかな酸味やミネラル感とぴったりだと思います」とのこと。
また、ゴッセは時間という概念を大切にしているとオディロンさんは言います。それは400年以上の歴史と伝統を受け継いできたということや、長期熟成にかける想いなどに現れています。そうやって生み出された極上のシャンパーニュを、特別な日はもちろん、日常のあらゆるシーンで楽しみ、すてきな時間を過ごしてみませんか。
醸造責任者オディロンさん 「シャンパーニュという大きな市場の中で、小さな我々ですが、日本の人たちに自分たちのワインが届けられることにとても感謝しています。」
▼ゴッセはこちらからもご購入いただけます。
https://www.hasegawasaketen.com/eshop/products/list?mode=&name=gosset&stock_available=1