寒い冬に日本酒蔵では本格的に仕込みが行われています。そして日本酒ファンを熱くさせ、寒さを吹き飛ばしてくれるしぼりたて新酒の出荷が始まります。
新酒はその年に収穫されたお米を使って、冬から春にかけて身も震える寒さの中、じっくりと醸されます。漢字が表すように新しいお酒のイメージそのままの味わいが特徴で、しぼったばかりのフレッシュで、みずみずしく、ハツラツとした香味はまさに出来立てそのもの。この味わいは造りの時期以外ではけっして出会うことが出来ません。ですので、みなさんにはお酒造りのシーズンには、なるべく沢山のしぼりたてを試していただきたいなと私たちは思っています。このしぼりたて新酒を味わうときには商品名から読み取れるキーワードに注目してみるのもおすすめです。しぼりたて新酒でよく目にするものをいくつかピックアップしてご紹介いたします。
「無濾過生原酒」
搾った後で、濾過や火入れ加水といった通常行われる工程を行っていないお酒です。濾過をしていないので、お酒本来の香味をダイレクトに感じる事ができますし、加熱処理をしていないため、抜群なフレッシュ感を楽しむ事が出来ます。加水によるアルコール度数の調整を行っていない原酒なので飲み口にビシっとパンチが効いています。ロックもアリですが、ここはせっかくならその濃厚な味わいをストレートで楽しんでみましょう。手を加えていない、しぼりたてのお酒のありのままの姿を味わってみたいという方にオススメです。
「うすにごり」
しぼりたて新酒ならではのジャンルとして人気のうすにごり。白い澱がふわふわと揺れる様は眺めているだけでも楽しいです。ふだん取り除かれてしまう日本酒の澱には旨み成分がぎゅっと詰まっています。しぼりたての新酒はまだ味わいに固いところがありますが、澱が絡むことで口あたりがソフトに感じられるようになります。中にはびっくりするくらいたっぷり澱が絡んだタイプもあります。そのとろりとした舌触りやぎゅっと詰まった旨味は一度ハマるとやみつきです。澱は静置していると徐々に沈んで来るので、まず上澄みを飲んで、次は軽く瓶を上下させ澱を絡めて、1本で2通りの楽しみ方をするツウの方もいます。蔵によっては全く同じお酒でもにごりタイプと濾過タイプ2種類を出しているところもあるので、飲み比べてみるのも面白いですよ。
「活性にごり」
にごり酒には活性タイプのものもあります。発酵途中で発生した炭酸が濁り酒の濃厚な飲み口を軽やかにし、どんどん飲めてしまします。通常のお酒と違い、吹きこぼれる恐れがあるため、開栓に気を使わなくてはいけないのがネックですが、開くまでのドキドキ感や上手に開ける事が出来たときの達成感が味わえるのはこのお酒ならでは。美味しさもいつもの倍以上に感じられること間違いなしです。
造り真っ最中の蔵元に聞いてみた!今期の新酒はどうですか!?
■「あたごのまつ ささら 純米吟醸 おりがらみ生酒」
720ml ¥ 1,650 税込 / 1800ml ¥ 3,190 税込
今期はせがわ酒店の新酒第一号でした。早くリリース出来る秘密は早刈りの富山県南砺産の五百万石を使っているから。しかも良質な1等米。今期はどんなところにポイントを置いて造りに臨みましたかとの問いに杉原専務は「伯楽星より味のある造りをしているあたごのまつですが、食中酒の原点を見つめ直すべく、例年より甘さをやや抑えた設計にしています」との事。ぜひ色んな冬の味覚とあわせてみましょう♪料理の旨みを引き出しサッパリとした飲み口にきっとお酒をつぐ手が止まらなくなりますよ。
新澤醸造店では造りの際に一つ一つの工程を丁寧に行う事はもちろん、お酒のフレッシュローテーションを徹底し、お客様の口に入る時の状態までを考えた製造・貯蔵・出荷管理・販売をしています。ちなみに12月頃からは宮城県産米に切り替わるそうで、時期をずらして飲み比べてみるのも良いですね。
■「鳳凰美田 初しぼり 純米吟醸」
720ml ¥ 1,760 税込 / 1800ml ¥ 3,080 税込
このお酒が入ってくるとはせがわ酒店ではいよいよ新酒シーズン。そんな気持ちにさせてくれる銘柄が鳳凰美田の初しぼりです。はせがわ酒店の中でもロングセラーの新酒で、富山県南砺産の五百万石で醸しているため、かなり早い時期から楽しむことができます。今年は夏の猛暑の影響で芯白が多く味が出やすい傾向にありましたが、小林酒造では造り手のキャラクターが酒に表れると考えていて、入社5年目の高島さんが中心になって造るこのお酒は、明るく軽快なタッチに仕上がったそうです。
ちなみに蔵ではこのように次世代に酒造りを伝える事をコンセプトに、若手蔵人の育成にも注力しています。例えば各工程の担当者を固定するのではなく定期的にローテーションすることで、誰でも同じ仕事が出来るようにしています。ぜひ未来に受け継がれていく日本酒の姿を想像しながらこのお酒を楽しんでください!
■「宮寒梅 純米吟醸 45% おりがらみ 新酒生酒」
720ml ¥ 1,650 税込 / 1800ml ¥ 3,036 税込
大崎市にある蔵では朝晩の冷え込みもいよいよ増してきて本格的な仕込みシーズンに入っています。宮寒梅の第一弾の新酒となるこちらのお酒を味わってみると例年以上にクリーンでフレッシュな印象で美味しさアップを感じました。仕込で昨年と変わったところはありますかとの問いに「おりがらみで甘く感じやすくなってしまうので、イソアミル系の酵母も使用して醸しました。爽やかな酸味が表現出来たとおもいます」と岩﨑さんは答えて下さいました。また、味わいや飲み口の印象に大きく影響を与えるおりの量は最小限に抑えて、フレッシュ感を押し出した味わいの新酒になるのを目指しているそうです。
使用しているお米は宮寒梅ではおなじみの美山錦です。このお酒は2月まで期間限定で造られますが、酒米はずっと変えることなく仕込みます。今期は放冷機を新調して酒造りに臨んでいます。蒸し米がよくほぐれ、芯から冷やすことが出来るおかげで、狙った適温にする事が容易になったそう。出荷場も全面空調設備を導入し、お酒の品質維持や夏場のスタッフの負担軽減も期待できると今後についても楽しみな様子でした。
■「赤武 Akabu F NEW BORN 生 1800ml」
1800ml ¥ 2,640 税込
赤武では珍しい吟醸タイプ。古舘杜氏もキャリア5年目を迎え味わいや蔵として目指していく方向性がかたまってきたそうです。綺麗で味わいのある酒質を目指し、岩手を代表する酒となれるよう蔵人みんなが一丸となって日々進化する酒造りを行っています。
味わいをのせた表現が難しい新酒においても、赤武のスタイルからぶれないよう調整を繰り返しながら仕込んでいるそう。ちなみに、このNEWBORNシリーズは吟醸タイプのFから始まり純米、純米吟醸と続きます。これは気温が関係しているそうで、まだあまり気温の低くならない時期には吟醸酒を、気温が下がってきた時期には純米、純米吟醸をと、自然環境も考えながら酒造りを計画して行っています。
■「仙禽 雪だるま しぼりたて活性にごり酒 1800ml ※要冷蔵・開栓注意」
720ml ¥ 1,760 税込 / 1800ml ¥ 3,520 税込
はせがわ酒店で数ある他のにごり酒の中でも特に大人気です。今年はどんな感じになるんだろうと薄井専務に伺って見たところ、ちょうど仕込みの真っ最中との事でした。2018年は悪天候に見舞われた年だったため酒米はいつもと違って決して良い出来とは言えませんでした。でもご安心を。仕込みでは細かな調整を行い、元気に発酵中と嬉しいお言葉を頂戴しました!写真はその発酵中の醪です。その下の動画は醪を濾している様子です。
このお酒で圧倒的に評価されているのはそのオンリーワンのシルキーな飲み口。「濁り酒は荒い味わいといわれたりもするけど、本当はそうでは無いんです」と薄井専務は言います。普段以上に丁寧な麹づくりに始まり、細かい布を用いての醪を濾す作業を何度も繰り替えします。そうして理想のきめ細かいにごりを生み出します。また上質な泡を造り出すために、酸化にも気をつけます。上槽したら同日中にすぐに濾して、すぐ瓶詰めするという超ハードな工程を経てようやく出来上がるのです。そんな事を聞いたらゆっくりと大事に飲みたいのですが、あまりの美味しさについするすると飲み干してしまうのがこのお酒の罪なところです。
■「紀土KID 純米吟醸 しぼりたて」
720ml ¥ 1,265 税込 / 1800ml ¥ 2,530 税込
日常的に良質な日本酒をお手頃価格で楽しみたい!と思ったときにまず思い浮かぶ銘柄のひとつが紀土ではないでしょうか。初めて飲む日本酒、日常で飲む日本酒のレベルを上げていきたいという山本専務の考えが反映された平和酒造を代表するブランドです。紀土を立ち上げてから10年が経ちましたが、カジュアルで親しみやすい存在感と、風のように軽やかな味わいでいまや多くの人に愛される様になりました。
紀土で第一弾のしぼりたてとなるこのお酒について柴田杜氏は「新米の五百万石の醪は元気に発酵し、まだ少し若いですが、香りも華やかで、酸味もあり、フレッシュさ溢れるしぼりたてに仕上がり、良いスタートを切ることが出来ました。」とのコメントをくださいました。柴田杜氏が仰るとおり、新酒特有の鮮やかな香りと爽やかでみずみずしい味わいのバランスがよく、はせがわ酒店で扱う新酒のラインナップから決して外すことは出来ない銘柄のひとつです。いつもの晩酌に、仲間と集まる際に、または日本酒に興味を持ちはじめた方にオススメする際など様々なシーンでご利用ください。
(画像は12日目の醪の様子です)
■「播州一献 純米 無濾過生原酒」
720ml ¥ 1,430 税込 / 1800ml ¥ 2,750 税込
※2019年からは新たに「七宝シリーズ」としてリリースされます!(11月中旬より販売予定)
■「播州一献 七宝 純米 無濾過生原酒」
720ml ¥ 1,430 税込 / 1800ml ¥ 2,860 税込
■「播州一献 七宝 純米 澱絡み 無濾過生原酒」
1800ml ¥ 2,970 税込
播州一献と言えば鉱山貯蔵庫を利用した熟成による深い味わいでよく知られますが、出来たばかりの新酒はどんな味わいに仕上がっているのか気になり、壺坂専務にお話をお伺いしました。播州一献では近年、”県産”から歩を進め”原産”のお米に注目してより地元に寄り添ったお酒造りにチャレンジしています。そのひとつがこの新酒でも使っている北錦。
山田錦や五百万石と言った全国的にメジャーな存在ではありませんが、20年以上前に兵庫県で開発された歴史ある兵庫県原産の品種です。「芯白が大きく、綺麗でキレがのあるお酒になる特徴があります、今回の新酒ではそれを活かし、爽やかな酒質に仕上げ、綺麗な酸がよく表現出来ました」との事。そのため加水していない原酒ですが、重さを感じさせずサクサクと飲めるような軽快さをあわせ持っています。飲む際は播州一献らしく料理と一緒に楽しんで欲しいそうで、この時期なら鱈やふぐなど白身魚のお鍋とあわせるのをオススメしていただきました。皆様もこの冬、おうちの定番酒に1本いかがでしょうか。
いかがでしたでしょうか、日本酒は冬から春にかけて造られ、秋に向かって熟していき、季節ごとで変化する味わいを楽しむ事が出来ます。そのサイクルの最初に位置するしぼりたてを飲むことで、その年のお酒の味わいを知る事が出来、秋に向かって熟成を深めていくお酒を追いかける楽しみも持つことが出来ます。「#しぼりたて新酒」からオンライン店で販売中のラインナップを確認出来ますので、この冬春は是非沢山の新酒を味わってみてください。